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おぎりんのblog♪小林信彦さんを偲んで
2026.11.01
カテゴリー:BLOG
今月も先月に続き、個人的といえば個人的なテーマです。わたしが、10代の頃から敬愛し、愛読していただけでなく、小説の読み方、芝居や映画の見方まで、学ばせてもらい、勝手に自身の師匠と思っていた作家、小林信彦さんが亡くなられました。ちょっとショックではありましたが、わたしより20歳以上年長の方ですから、長寿社会になったとはいえ、来るべき時が来たと思っています。このタイミングで一度、小林さんとの出会いからその後について、書いておきたいという欲求が自然におきました。
今年は有名作家が何人も亡くなられています。7月23日にミステリー作家の東野圭吾さんが。10月17日には、作家であり、論客でもあった村上龍さんが。そして10月19日に小林信彦さんが。メディア的には、TV番組にレギュラー出演されていた事もあり、村上龍さんの扱いが大きかったように思います。
しかし、わたしにとっては、先に述べましたように小林信彦さんの存在が圧倒的です。もう半世紀以上にわたり、小説やエッセイを読んできました。しかし、小林さんとの最初の出会いはTV番組でした。わたしが中学生の頃、日本TV系で放映されていた「九ちゃん!」です。日航機事故で亡くなられた九ちゃんこと当時の人気歌手坂本九さんをメインとしたバラエティ番組です。
他の出演者は、わたしと同じ年齢で当時中学生だった小林幸子さん、小川知子さん、そして南伸介さん率いるてんぷくトリオ(他に伊東四朗さん・戸塚睦夫さん)が。1965年から1968年にかけて放映されていた30分番組です。
この番組では、おそらく日本初の方法論で台本が書かれていました。それは複数の作家をホテルに缶詰にし、1日で企画から執筆までというやり方です。その複数の作家たちの中の1人が小林信彦(当時の筆名は中原弓彦)さんでした。他にあの井上ひさしさん、城悠輔さん、河野洋さん、山﨑忠明という豪華メンバーでした。この時の井原髙忠プロデューサーにがっちり絞られたエピソードを小林さんは、エッセイや小説に書かれていて、非常に面白いです。
とにかく、「しゃぼん玉ホリデー」や、この「九ちゃん」と、現在のバラエティは根本的にコンセプトも作り方も違うのです。現在のものは何名かのタレントのキャラクターに頼った内容ですが、当時のバラエティは練りに練られた台本があり、一流の歌手、一流のダンサー、一流の伴奏陣でちゃんとリハを重ねて放映されていました。特に60年代前半までは、ジャズ界からTV局に流れてきたスタッフも少なからずいて、譜面も読める人が結構いたようです。
またタレント側をみても、クレイジー・キャッツのメンバーなどは、谷啓さん。安田伸さんなど、ジャズの専門誌の楽器別人気投票でいつもベストテンの常連というぐらい、ミュージシャンとしてのレベルが高かったです。シャボン玉ホリデーの全盛期には、小学校に登校しても、この番組を観ていないと、友達と会話が出来ないというような人気ぶりでした。
ちょっと脱線してしまいましたが、小林さん自身のキャリアとしては、宝石社の「ヒッチコックマガジン」の編集長を江戸川乱歩先生の推薦で引き受け、青島幸男さん、永六輔さん、前田武彦さんらとともにマスコミにもてはやされるマルチタレントの走りでした。その後フリーとなり、映画・ミステリー・TVなどの評論の執筆、そして先の項で述べた、TV番組のいわゆる放送作家を。そのかたわら小説の執筆も。小説の評論では、これまたわたしの大好きな作家である小松左京さんや筒井康隆さんをかなり早い時期に取り上げられていました。またスティーブン・キングについても、早くから評価されていましたし、国内外を問わず、わたしの読書遍歴に大きな影響を与えています。元々わたしの読書傾向にあっていたのかもしれません。
TVの仕事が途絶えた後には、小説の執筆に専念され、「オヨヨ」シリーズ、「唐獅子」シリーズのようなエンタテイメント、「紳士同盟」などのミステリーを多数執筆。一方で「日本の喜劇人」や「世界の喜劇人」などで、わたしの興味に合わせてもらったようなエッセイで、何度も読み返していました。戦前アメリカの1時代を担った喜劇一家である「マルクス・ブラザース」など、小林さんのエッセイなしには、知る由もなかったでしょう。このようにコメディ・お笑いについても、非常に造形が深く、典型的な東京下町っ子でありながら、大阪のお笑いをさぐるために、「てなもんや三度笠」の作者である香川登志緒さんを訪ね、藤山寛美さんの東京での公演に通いつめられていました。
小説の中で、ヒッチコックマガジン編集長時代を「夢の砦」という長編小説で描かれています。少し時代をずらし、登場人物も実在の人物(例えばクレイジー・キャッツの谷啓さんなど)と、創造の人物をおりまぜて描かれています。この小説は当初、週刊「平凡パンチ」に連載され、後に単行本として発刊されています。連載時には、そのページを切り抜き、ずっと保管していましたが、単行本購入と共に廃棄しました。この小説では、信頼していた人の裏切りなど、小林さんが疎開した際のイジメや、実家が騙された経緯なども反映され、厳しい人生観が反映されています。
これは余談ですが、小林さんの著書で描かれている内容を、まんまわたし自身の仕事に活かした事があります。それは、彼が「ジャガーズ敵前上陸」という映画の脚本を手伝った際、ストーリー上の矛盾を解決する為、監督と旅館にこもっていた時のエピソードです。戸板に各シーンの概説を書いた半紙を貼り付け、並び替えて検討、ストーリーを決定するというシーンです。当時、支店の戦略スタッフとして支店長と、営業本部へのプレゼン資料を作成していました。まさにこの方法を応用、A4の紙に展開骨子項目を書き、グリーンボードに貼り付けてプレゼンストーリーを決めました。まだパワーポイントなどという便利なものがなかった時代の話ですが。
わたしの人生観、仕事観に大きな影響を与え続けていただいた、大作家が亡くなりました。我が家にある100冊をこえる著書を、読み返そうと思っています。過去に読んだ時とは異なる受け止め方になるかもしれません。また新たな発見もあるかもしれませんし、今後のわたしの人生に活かしていきたいと思っています。
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