あらゆる分野とインパクトのある取り組みを

ー 現在の取り組みについて

宮丸:「ママプラグの主軸である防災セミナー事業の中では『ファシリテーターになりたい』という女性が増加しています。地域の防災リーダーを育てる。といったような、人を動かす方向へ活動が広がっているのを感じますね。」

冨川:「今年度、東京都で『女性視点の防災ブック』編集・検討委員会が発足し、ママプラグの代表として委員の1人に任命されました。都知事らとこのような大きな枠組みで防災に取り組みながら、どうやったら本当に安心・安全に住める街づくりができるのか。を徹底的に討論しています。責任もより大きくなり、身が引き締まります。」

宮丸:「企業といっしょに、防災マニュアルの見直しもしています。既存のものを『使える』マニュアルに変えていく。企業内でも防災リーダーを育成したい、という動きがあります。教育機関や保育園でも、新たに防災マニュアル作りを一緒に進めています。」

ー 広がる、高まる、防災意識

宮丸:「最近増えているオーダーは、マンションの管理会社の防災チェックですね。耐震設計がしっかりしているタワーマンションは、そんなに大きくは壊れない。だからこそ、災害時には中でどう過ごしていけばいいのか。というのを管理組合の委員さん達を集めたセミナーで、お話ししています。」

冨川:「不動産会社や住宅メーカー、自動車メーカー、保険会社など、声をかけてくれる企業・団体の裾野が広がっているのを感じます。オリジナルの内容で講座を設計したり、防災冊子を作ったり・・・こうやって長いスパンでお付き合いできるところが増えて、防災意識が一気に高まりつつあるのは、嬉しいことですね。」

小暮:「今後一緒に取り組んで行きたいのは食品メーカーですね。私たちの強みである『生活目線』を活かして、レシピ提案や防災食の監修などをしていきたいです。防災食、というと食品を限定してしまうイメージがありますが、災害時にも食べられる日常食。といったアクティブ防災発想で、これまでにないレシピの提案や、コンサルティングのお手伝いをしたいです。」

コミュニケーション力の高い街=災害に強い街

ー 備えがスタンダード。になるために

冨川:「防災の立ち位置が、禁煙やエコ活動のようにもっと日常的で『かっこいいこと』になればいいな、と考えています。そして、外に発信することが当たり前になってほしい。『ウチでは、こんな風に(備えを)やってるんだけど、あなたのうちはどう?』と、親同士が子どもの話をするように、気軽に話し合えるような。同じように、企業同士も『あの企業がこんな風にやってるなら、うちも。』と防災が社会現象になっていくような世の中が理想です。そのためのロールモデルを私たちが作りたい。と思っています。」

小暮:「一度、備える意識を持ったとしても、年に2~3回はやらないと浸透しません。継続しなくちゃ意味がないんです。体験談も、時間が流れると風化してしまいます。『あの震災を思い出して!』じゃダメなんです。『日常的にあんなことこんなことをやっていたら、災害の時も役に立ったよ。気づいたら、生き残っていたよ。』となること。私たちは、そこを目指しています。」

宮丸:「ママプラグは「防災ゼロをゼロにする」を目標に活動しているので、自主的に防災に関わる人ではなく、防災に興味がない人にももっと伝えていきたい、と思っています。私たちも、元々のスタートはそこでした。そのためには希望者参加型の講座だけでなく、企業や行政、教育機関などでも受講必須のものとして取り入れていってもらいたいです。」

ー 防災と育児は似ている?

冨川:「家を建てたばかりの方が『全ての部屋を防災仕様にしなさい』と言われて、すごくしんどい気持ちになった。というお話を聞いたことがあります。そういう方には『全部じゃなくていい。一部屋だけ、そうすればいいんですよ。』とお話ししています。すると、気持ちが楽になった!と言ってくれるんですね。なんでも完璧じゃなくていいんです。

小暮:「育児や家事と同じです。完璧にやらなきゃ!と思うとしんどいけれど、たまにリフレッシュしながら力を抜いてやれば、続けられますよね。
また、防災の内容に関しては『ウチと隣は違ってて、いい』というのも育児と似ているかもしれません。私たちは、講座の時にいわゆる『THE防災リスト』というものは渡さないようにしているんです。必ずお家によって『本当に必要なもの』は違うはず。家族構成やペットの有無、好みや習慣などでも変わります。そこで『我が家オリジナル』で、防災リストを作成してもらうようにしています。」

ー 誰も死なない街づくりを

冨川:「防災の1番のポイントは『人と人とのつながり』だと思います。災害時に強いもの・必要なものは、何よりもコミュニケーション力なんです。自分がその地域の一部であることを認識し、地域を愛して、参画する。そういった行動の一つ一つが、災害に立ち向かっていける力になる。
都会は特に、近所付き合いが乏しいですよね。核家族もまだまだ孤立しています。でも『子どもの挨拶が地域を強くする』というのと同じで、防災を自分のためだけにやるのではなく、家族や地域のためにやろう!という意識。それが、地域を強くするんです。結果、普段も暮らしやすい街ができる。そして災害時は、自分も、誰かの命も助けることができるんです。」

宮丸:「何かあった時に、助け合える街。というのは、イベントやお祭りなどは必ず一致団結して盛り上がります。世代間の交流も増え、子どもが育てやすく高齢者にも優しい街になります。」

小暮:「地域全体、関わるコミュニティーの中で子どもは育ちます。大人もそこに住み続ける限り『うちの子だけが良ければいい』という発想は通じません。そういった行動は、防災だけじゃなく防犯にも役に立つんですよ。災害時に水や物資を買い占める動きもなくなる。『自分の家族だけが助かる。じゃなく、みんなが助かる』というアクティブ防災の意識を浸透させることで、安心・安全な街作りに貢献できる。ひいては、国力が上がる。と考えています。」